潜水 25m

プール

スポパークのプールは、ラインが 6 本くらいある。 5 本ではない。5 本なら 5 m おきなのだが、では 6 本だと？　等間隔で 4.16666・・・m おきか。 7 本だと 3.571428571428571428・・・ m おき。おっと循環小数か。

プールに通い始めて 2 ヶ月になる。妖怪三日坊主がよくぞ続けたと感心。

息継ぎがスムーズになって来たような気がする。つい最近までは 5 分間に 1 往復のペースだったが、今なら 5 分間で 2 往復できる。

これならもしかすると潜水 25 m 行っちゃうのではないかと思って試してみた。

深呼吸を繰り返し、細胞に酸素を蓄え、最後に目いっぱい息を吸い込んだ。

壁を蹴って潜水開始。

基本は下向き、たまに進行方向を見て距離を確認する。ゆったりとしたバタ足に、平泳ぎの腕の動きで泳いでいく。バタ足より、腕で水を掻くとグイっと進んでいく。2 本、 3 本とライン上を通過していく。

最初の頃は身体に浮力があって、潜る力＋進む力が必要だったが、今回は浮力が少なくなったらしく、潜る力はゆっくりとしたバタ足で賄うカンジ。

半ばまで進んだ頃に、やや息が苦しくなった。

前方を確認すると、残り 2 本。最高に苦しい。もういいかな、と弱気な考えが浮かぶが、息を吐けば楽になれるからもう少しがんばろうとか思ったりする。その前向きさを仕事に活かせればいいのだが。

ラインは残り 1 本となった。古い記憶が冬の街灯に映画的手法で浮かび上がる。浮かんでは消えるその記憶は、別段、楽しい思い出でも何でもないだけに、不吉なことを暗示していると思えるのは気のせいだろうか。

途切れそうな意識をつなぎとめ、壁にタッチ。浮上して息を思い切り吸い込んだら目の前が血の色に染まった。健康になりに来ているはずなのに、不健康なことをしている気がしてならない。水中眼鏡の下で目が赤光を放っているだろう。

ともあれ、「 I'm OK 」と心の中でつぶやく。どっかの番組で見たルール。恥ずかしいから声には出さないが。

ついに潜水 25m を達成した。輝かしい記録の一歩を踏み出したわけだ。次は 50 m に挑戦しようと思うが、アッカド人 ( シュメールの人 ) が車輪を発明するくらいのブレイクスルーがない限り無理だ。